
ダボ穴と棚受けを使う可動棚のイメージ(AI生成)。掲載図面の再現や、穴のピッチ・すき間・耐荷重などの施工仕様を示すものではありません。
「可動棚の棚板を側板の内法いっぱいで描いて出したら、現場で入らないと言われました」「ダボ穴は、どこからどこまで開ければいいですか」
可動棚は、あとから高さを変えられることが前提の棚です。そのぶん、棚の受け方・棚板とのすき間・ダボ穴の範囲と位置・棚板の厚みを図面で決めておかないと、棚板が入らない、たわむ、見える所に穴が並ぶ、といったことが起こります。家具図面全体の描き方は家具図面の作成(製作図・施工図)でまとめています。この記事では、可動棚を家具図面にどう描くかに絞ってお話しします。
まず「棚の受け方」を決める
可動棚の受け方は、大きく3つです。どれにするかで棚板の幅が変わるので、描き始める前に決めます。
| 受け方 | 特徴 | 図面で決めること |
|---|---|---|
| ダボ穴+棚ダボ | 側板に穴を並べて開け、棚ダボで受ける。見た目がすっきりする | 穴の径・ピッチ・開ける高さの範囲・前後の位置 |
| 棚柱を掘り込む | 側板に溝を掘って棚柱を埋め込む。棚柱の面が側板とそろう | 溝の幅と深さ(側板の断面に描く)、棚柱の品番と長さ |
| 棚柱を表に付ける | 側板の表面にそのまま留める。加工が少ない | 棚柱の品番と長さ、棚柱の厚みぶん棚板を狭くすること |
住宅の収納や店舗のバックヤードではダボ穴、重い物を載せる棚や高さを頻繁に変える棚では棚柱、という使い分けが多いです。棚柱は製品ごとに受けられる重さ・ピッチ・取付け方が決まっているので、品番を決めてからその値で描きます。
決める3つの寸法
1. 棚板の幅(側板の内法から引く)
棚板は、側板の内法より必ず小さく描きます。
- ダボ穴・棚柱の掘込み … 棚板の幅 = 側板の内法 − すき間(両側で2〜4mm程度)
- 棚柱の表付け … 棚板の幅 = 側板の内法 − 棚柱の厚み×2 − すき間
このすき間は、化粧板の厚みのばらつき、側板のわずかな反り、現場での組立ての誤差を吸収するためのものです。ゼロで描くと、工場では入っても現場で入りません。棚板の奥行きも、背板や扉に当たらないよう少し控えて描きます。
2. ダボ穴(棚柱)の範囲と前後の位置
図面に書くのは次の3つです。
- 高さの範囲 … どこから、どこまで穴を開けるか。範囲を書かないと、固定棚の近くや見える所にまで穴が並びます
- ピッチ … ダボ穴は32mmピッチなど、加工する工場の機械に合わせた値が多く使われます。棚柱は製品で決まっています(20mm・25mmなど)。どちらも数値をそのまま図面に書きます
- 前後の位置 … 棚板の前と後ろに振り分けます。前に寄せすぎると棚板の後ろが下がり、後ろに寄せすぎると前が下がります

上の作図例では、側断面図にダボ穴の並ぶ範囲(900mm)と、上下の固定棚からのあき、穴の前後の位置(側板の前から45mm・奥から35mm)を書いています。棚板の奥行き272mmは、側板の前から10mm控えて置く寸法です。正面図には「可動棚」「固定棚」を書き分けています。
3. 棚板の厚みとスパン(たわみ)
棚板は、幅が広いほど、載せる物が重いほどたわみます。厚み20mm前後の棚板なら、スパン(左右の支えの間)が600〜700mm程度までに収めておくと安心です。それより広いときは、次のどれかで対応します。
- 棚板を厚くする(25mm以上)
- 中仕切りを入れてスパンを短くする
- 棚板の前の小口に補強の見付け材を付ける
書類や本を載せる棚は、見た目で決めた厚みより一段厚くしておくのが安全です。たわみは取り付けた直後ではなく、物を載せて半年ほどしてから言われます。また、背の高い棚では、途中に固定棚を入れておくと側板の反りを止められます(上の作図例でも、可動棚の間に固定棚を2段入れています)。
家具図面に書くこと
- 仕様欄 … 棚板の材・厚み・小口の処理、棚ダボ(または棚柱・棚受け)の品番と数量、掘込みか表付けか
- 正面図 … 可動棚と固定棚の書き分け、標準で組む高さ
- 側断面図 … ダボ穴の範囲と前後の位置、ピッチ、棚板の奥行きと控え
- 平面図 … 棚板の幅と側板とのすき間、中仕切りの位置
材料欄の書き方は家具図面の材料欄、「メラミン」だけで止めていませんかでまとめています。
よくある失敗
- 棚板を内法どおりに描いた … すき間を見込んでいないため、現場で入らない
- 掘込みの寸法のまま、表付けで取り付けた … 棚柱の厚みぶん、棚板の幅が足りない
- ダボ穴の範囲を書かなかった … 固定棚のすぐ上や、扉を開けて見える所まで穴が並ぶ
- スパン900mmに20mm厚を指定した … 本を載せた段から順にたわむ
私達の現場でも、可動棚でいちばん手戻りが出るのは「棚の受け方を決めないまま棚板の寸法を出してしまう」ケースです。あとから棚柱の表付けに変わると、全段の棚板を作り直すことになります。私達は受け方と金物の品番を仕様欄に先に書き、そこから棚板の寸法を出す順番で描いています。
まとめ
- まず棚の受け方(ダボ穴・棚柱の掘込み・棚柱の表付け)を決める。これで棚板の幅が変わる
- 棚板は側板の内法からすき間を引いて描く。内法いっぱいにしない
- ダボ穴は範囲・ピッチ・前後の位置の3つを側断面図に書く
- スパンが広い棚は、厚み・中仕切り・補強のどれかでたわみを防ぐ。背の高い棚には固定棚を
可動棚を含む家具図面の作成はこちらからご相談ください。収納と並ぶ建具や造作の図面は、木製建具図面・造作図面のページでもご紹介しています。引出しや扉の描き方はスライドレール・スライド丁番の記事もあわせてどうぞ。
参考リンク
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