TECHNICAL JOURNAL

建具図面で上吊り引戸をどう描くか|レールの下地・床とのすき間・下部ガイドの決め方

床にレールを設けず上部レールで吊る木製引戸の空間イメージ

上吊り引戸の空間イメージ(AI生成)。掲載の引込戸図面とは別形式で、金物・下地・寸法の仕様を示すものではありません。

「上吊りの引戸にしたいと言われたけれど、図面では何を決めておけばいいのか」「床とのすき間は何ミリで描けばいいですか」

上吊り引戸は、戸の重さを上のレールで吊り、床にはレールも溝もつくらない引戸です。床がフラットになるので住宅でも店舗でも人気ですが、そのぶん上の下地・吊車・床の下ガイドの3つを図面で決めきっておかないと、現場で吊れない・揺れる・床をこする、といった問題が起きます。建具図面全体の描き方は木製建具図面の作成(製作図・施工図)でまとめています。この記事では、上吊り引戸を図面にどう描くかに絞ってお話しします。

上吊り引戸は「上で吊って、下で振れを止める」

部分役割図面で決めること
上部レール戸の重さをすべて受ける品番、取付け位置(上枠の中か、壁の外か)、レールを留める下地
吊車(戸車)戸の上に付き、レールの中を走る品番、戸の重さに合うか、ソフトクローズを付ける側(戸先・戸尻・両方)
下部ガイド・振れ止め床に付けて、戸の下が前後に揺れないようにする品番、床に付ける位置、戸の下端の溝
床とのすき間戸の下が床をこすらないためのあきメーカーの指定値と、床の仕上げ厚を含めた高さ

床にレールがないぶん、戸の下は床に付けた小さなガイドだけで支えられています。メーカーのよくある質問でも、戸を閉めた状態でガイドのない側の端を押すと戸は揺れるため、振れ止めや戸当りのマグネットキャッチを併用する方法が紹介されています。

決める3つの寸法

1. 戸の高さ(床とのすき間から逆算する)

上吊り引戸の高さは、上枠の内法から、レールと吊車の寸法、床とのすき間を差し引いて決まります。床とのすき間は製品ごとに標準値と許せる範囲が決まっていて、下の作図例では10mmで描いています。すき間が範囲を外れると、ガイドが外れたり戸の下が床をこすったりするので、使う金物の施工説明書の値で描きます。

2. レールを留める下地

上部レールは戸の重さを全部受けるので、ねじがすべて下地に効く位置に付けます。石膏ボードだけに留めると、開け閉めをくり返すうちに緩みます。上枠の中にレールを納める場合は上枠そのものの固定、壁の外に付けるアウトセットの場合は壁の中の下地の範囲(レールの長さ全体)を、図面に描いて大工さん・内装屋さんと共有します。

レールに傾きやねじれがあると、戸がひとりでに動いたり、開け閉めが重くなったりします。下地の面が平らに出ているかも、取付け前に確かめておきます。

3. 下部ガイドの位置と、引残し

下部ガイドは、戸を全部開けたときも、閉めたときも、戸の下端の溝から外れない位置に付けます。平面図に、全閉と全開の両方の戸の位置を描いて確かめるのが確実です。

あわせて、引き切ったときに戸がどこで止まるか(引残し)も決めます。引残しは通れる幅に直結するので、考え方は建具図面の「有効開口」はどこを測るのかも参考にしてください。

上吊りの引込戸の縦断面図と姿図。仕様欄にレール・吊車・下部ガイドレール・振れ止めの品番、断面に床とのすき間の寸法が入っている

上吊りの引込戸の作図例。縦断面にレールと吊車、床の下部ガイドと床とのすき間、仕様欄に金物の品番をまとめています。

図面に描いておくこと

よくある失敗と確認のコツ

失敗防ぎ方
床の仕上げ前の高さで戸を作り、すき間が詰まった(または空きすぎた)すき間は仕上げ後の床から。床材の厚みを仕様書で確かめる
レールのねじが石膏ボードだけに効いて、数か月で戸が下がった下地の範囲を図面に描いて先に共有する
下部ガイドを打つ位置に床暖房のパネルがあった床の設備図と重ねて、ガイドの位置を決めておく
ガラス入りの重い戸で、吊車の耐荷重を超えた戸の重さを計算し、吊車の適応戸重量を確かめる

私達の現場でも、上吊り引戸は「床とのすき間がどこからの寸法か」の確認でいちばん手戻りが出ます。設計図に「H=2000」とだけあると、それが床仕上げからなのか、下地からなのかが分かりません。私達は縦断面に床仕上げの線を必ず描き、すき間の寸法と金物の品番を並べて、承認の段階で確認していただくようにしています。

まとめ

上吊り引戸を含む建具図面の作成はこちらからご相談ください。引戸と並ぶ収納や造作の図面は、家具図面・造作図面のページでもご紹介しています。

参考リンク


ブログ一覧へ