TECHNICAL JOURNAL

建具図面の「勝手(R・L)」はどこから見て決めるのか|開き戸・引戸・サッシで基準が違います

自然光が差す室内の木製ドア(イメージ)

「図面はRで描いてあるのに、現場に届いた扉が反対だった」

建具工事で、いまも起き続けているトラブルです。原因を調べると、扉の寸法や金物ではなく、「勝手(かって)」を誰がどこから見て決めたかが食い違っていることがほとんどです。

この記事では、建具図面の勝手(R・L)をどこから見て決めるのか、開き戸・引戸・サッシで基準がどう違うのか、図面にどう描いておけば間違いが止まるのかを、実務の目線でまとめます。建具図面の全体像(建具表との違い・描く内容・依頼時の資料)は、木製建具図面の作成(製作図・施工図)のページで解説しています。

「勝手」とは何か

勝手は、扉がどちら側を軸にして、どちらへ開くかを表す言葉です。開き戸なら丁番(ちょうばん)が付いている側、つまり「吊元(つりもと)」が右か左かで決まり、右ならR(右勝手・右吊元)、左ならL(左勝手・左吊元)と呼びます。

やっかいなのは、同じ扉でも部屋の内側から見るか、外側から見るかで左右が逆になることです。「右」「左」という言葉そのものには、立つ位置の情報が含まれていません。ここに、すべての勝手違いの原因があります。

勝手を伝えるときは、「どこに立って見たときの右か」を必ずセットで伝えます。R・Lの1文字だけで伝わると思わないことが、いちばんの予防策です。

開き戸:「手前に引いて開ける側」から見る

室内の木製開き戸では、主な建具メーカー・金物メーカーの基準はそろっています。扉を手前に引いて開ける側に立ち、丁番が右にあればR、左にあればLです。スガツネ工業、DAIKEN、ナスラックの各社が同じ考え方で説明しています(記事末の参考リンク)。

ここで注意したいのが玄関ドアや外開きの扉です。「手前に引いて開ける側」から見るという原則は同じですが、外開きの扉は外に立って引くことになるので、室内から見た左右とは逆になります。「室内から見て右」とだけ伝えると、ここで食い違います。

引戸:メーカーによって基準が違う

引戸には丁番がないので、開き戸の基準がそのまま使えません。一般的には扉を引き込む側(控え壁側)を基準に、扉が右にあれば右引き(R)、左にあれば左引き(L)とする表し方がよく使われます。たとえばDAIKENは「控え壁がある側に立って、右側に扉があれば右引きのR」と案内しています。

ただし、引戸の左右はメーカーや製作所ごとに基準が違うことがあるのが実情です。既製品の引戸を使うときは、そのメーカーのカタログの「勝手の見方」の図を必ず確かめることをおすすめします。木製建具として製作する場合は、R・Lの文字に頼らず、次の章で説明するように平面図で戸の位置と引く方向を描いて伝えるのが確実です。

サッシ(外部の窓):「外から見て」が基本

アルミサッシなど外部の窓は、建物の外から見て吊元が右か左かで表すのが一般的です。サッシメーカーの図面や姿図は「外観」を基準に描かれています。室内の建具と基準が逆になるので、同じ図面の中に室内建具とサッシが並ぶときは、それぞれの基準を注記しておく必要があります。

縦すべり出し窓を2つ並べるときに吊元を左右対称にする、といった設計の判断も、この「外から見て」の基準で伝えないと、意図と逆に作られてしまいます。

図面にはどう描くか

勝手を図面で伝える手段は3つあります。1つに頼らず、重ねて描くのが実務のコツです。

  1. 平面図の開き弧(円弧)と戸の位置:扉がどちらへ、どこを軸に開くかが一目で分かる。勝手の正本はこれ
  2. 姿図(立面)の記号:開き戸は吊元を頂点にした三角形の記号、引戸は引く方向の矢印で表す。ただし姿図をどちら側から見て描いたかを必ず書く
  3. 建具表・図面の注記:「この図面は勝手(R)を示す。反対勝手(L)は○本」のように、文字で明記する

木製片開き戸の建具図面の作図例。姿図・断面図・枠廻り詳細とともに、右下に『この図面は勝手(R)を示す』の注記と、立つ位置を示す小さな平面キープランが入っている

上は、私達が作成した木製片開き戸の建具図面の例です(一部を伏せています)。姿図や枠廻りの詳細図と一緒に、右下に「※この図面は勝手(R)を示す」という注記と、どこに立って見た図かが分かる小さな平面キープランを入れています。文字と絵の両方で示しておけば、読む人が自分の思い込みで左右を判断する余地がなくなります。

建具表(設計図)と建具図面(製作図)で勝手が食い違うのも、よくある失敗です。勝手の正本は平面図と決めて、建具表・製作図の全数を平面図と突き合わせるのが基本です。

私達の現場でも起きた失敗と、確認のコツ

私達の現場でも、設計図の建具表に「R」とあった扉を、そのままRで製作図に描いたことがあります。ところが平面図を見ると、その扉は廊下側へ開く外開きで、建具表のRは廊下側から見た右でした。製作図の姿図は室内側から描いていたので、扉ができあがってから吊元が逆と分かり、丁番の欠き込みをやり直すことになりました。

それ以来、建具図面を描く前に必ず次の3点を確かめています。

どれも、作図の前に質疑として出しておけば費用をかけずに決められます。逆に、製作が始まってからでは扉1本の作り直しになります。

まとめ

扉に取り付く家具や、枕棚・額縁との取合いが多い場合は、家具図面や造作図面と一緒に検討すると食い違いを防げます。勝手の確認まで含めた木製建具図面の作成は、こちらからご相談ください。

参考リンク


ブログ一覧へ