「建具表では幅800のドアなのに、車いすが通れる幅が足りないと言われた」「洗面所の扉は付いたのに、洗濯機が入らなかった」
こうした食い違いの多くは、「どこからどこまでの寸法か」をそろえないまま図面をやり取りしていることから起きます。建具の寸法には、枠の外側・枠の内側・扉の幅、そして実際に人や物が通れる「有効開口」があり、同じ「800」でも指しているものが違うことがあるからです。
この記事では、建具図面で有効開口をどこで測るのか、開き戸と引戸で何を差し引くのか、図面にどう書いておけば食い違いを防げるのかをまとめます。建具図面に描く内容の全体は木製建具図面の作成(製作図・施工図)のページで解説しています。
有効開口とは:実際に通れる幅と高さ
有効開口(有効幅・有効寸法とも呼ばれます)は、扉をいっぱいに開けたときに、実際に人や物が通れる幅と高さのことです。枠の内側の寸法(内法)から、通るときにじゃまになる部分を差し引いた寸法になります。
| 寸法の呼び方 | どこからどこまでか |
|---|---|
| 枠外寸法 | 枠の外側から外側まで。壁の開口(下地)の大きさを決める寸法 |
| 内法寸法 | 枠の内側から内側まで。扉が収まる寸法 |
| 扉の寸法 | 扉そのものの幅・高さ・厚み |
| 有効開口 | 扉を開けた状態で、実際に通れる幅と高さ |
建具表に「W800」とだけ書いてあると、それが枠外なのか、内法なのか、有効なのかが読み手によって変わってしまいます。ここがすべての食い違いの出発点です。
開き戸は「開いた扉の厚み」と「戸当り」の分だけ狭くなる
開き戸を90度に開けると、扉そのものが開口の中に残ります。そのため、有効幅は内法よりも小さくなります。差し引くのは主に次のものです。
- 扉の厚み:吊元(丁番の側)で、開いた扉の厚みの分だけ開口がふさがる
- 戸当り:枠に付いている戸当りの出っ張りの分
- 取手・レバーハンドルの出:基準によっては、開いた扉から飛び出したハンドルの分まで差し引く
たとえば、壁の芯々が910mmの間仕切りに付ける片開き戸では、有効幅が700mm前後になることも珍しくありません。「扉の幅が800あるから大丈夫」と考えると、実際に通れる幅とは大きくずれます。
引戸は「引残し」と「戸の厚み」で決まる
引戸は、開けたときに扉が開口の外へ逃げるので、開き戸より有効幅を取りやすい建具です。ただし、次の2つで有効幅が変わります。
- 引残し:扉を引き切ったときに、開口の中に残る扉の幅。取手をつかめるように、また指を挟まないように、あえて残すことが多い
- 扉の小口・戸当り:引き込んだ扉の端(小口)や、反対側の戸当りの出っ張り
バリアフリーの基準では、引戸の有効幅は引残しや戸の厚みを含めずに測るのが一般的です。つまり、引き切った扉の端から、反対側の枠(戸当り)までが有効幅になります。

上の図は、アウトセットの片引戸の建具図面の例です。横断面図の上に、開口の内側の寸法と、そこから両側を除いた有効幅「W=602」を並べて書き、扉を引き切ったときに開口へ扉が残らないことを「引残しなし」と注記しています。扉の幅(DW)や枠の幅(FW)とは別に、通れる幅を1本の寸法線で示しておくと、誰が見ても有効開口が分かります。
基準で求められる有効幅の例
有効開口がとくに問われるのは、車いすや介助を考えた出入口です。代表的な基準の例は次のとおりです(適用される条件や細かな測り方は、それぞれの原典で確認してください)。
| 基準 | 出入口の有効幅の例 |
|---|---|
| バリアフリー法の建築物移動等円滑化基準(不特定多数が使う建築物など) | 80cm以上(自治体の条例やガイドラインで、望ましい幅として90cm以上を示す例もある) |
| 住宅性能表示制度の高齢者等配慮対策等級(等級5) | 日常生活空間の出入口 800mm以上(浴室も800mm以上) |
| 同 等級3・等級4 | 出入口 750mm以上(浴室は等級3で600mm以上・等級4で650mm以上) |
どの基準で判定するかによって、ハンドルの出を差し引くか、戸当りをどう扱うかといった測り方が少しずつ違います。図面には、どの基準の有効幅なのかを書き添えておくと、確認する人が迷いません。
図面に書いておくこと
私達の現場でも、建具の寸法の食い違いは「描いていなかった」よりも「どこの寸法か書いていなかった」ことで起きるほうが多いと感じています。有効開口については、次の4つを図面に残すようにしています。
- 有効幅を寸法線で示す:内法や扉幅とは別に、「有効○○」と分かる寸法を平面図(横断面図)に入れる
- 有効高さも示す:床(または敷居の上)から上枠の下端まで。ハイドアや吊戸では、レールやランナーの下端からになる
- 引残しと戸当りの寸法を書く:「引残し○○」「引残しなし」のように、有効幅が決まる理由を一緒に書く
- 建具表の「W×H」が何の寸法かを明記する:表の見出しや注記で「W・Hは枠外寸法」などとそろえる
現場でよくある失敗
- 建具表の「W800」を有効幅だと思い込んでいたが、実は内法寸法で、車いす対応の出入口として有効幅が足りなかった
- 洗面所の開き戸で、開いた扉の厚みとレバーハンドルの分だけ狭くなり、洗濯機や冷蔵庫が通らなかった
- 引戸の引残しを図面に書いておらず、取手の位置に合わせて現場で引残しを増やしたら、有効幅が基準を下回った
- ハイドアの有効高さを上枠の下端で考えていたが、実際は上吊りのレールの分だけ低かった
建具の有効開口は、家具の搬入や造り付け家具の取付とも関わります。大きな家具や設備機器が通る出入口は、家具図面・造作図面と同じタイミングで有効寸法を確認しておくと、搬入の当日に慌てずに済みます。
まとめ
- 有効開口は扉を開けた状態で、実際に通れる幅と高さ。枠外・内法・扉の寸法とは別のもの
- 開き戸は開いた扉の厚み・戸当り(基準によってはハンドルの出)の分だけ狭くなる
- 引戸は引残しと戸当りで決まる。引き切った扉の端から反対側の枠までが有効幅
- 基準の例はバリアフリー法の出入口80cm以上、住宅性能表示の等級5で800mm以上など。どの基準かを図面に書き添える
- 図面には有効幅・有効高さ・引残しを寸法で示し、建具表のW×Hが何の寸法かを明記する
家具の搬入や造り付け家具との取合いは家具図面、壁や天井まわりの納まりは造作図面のページもあわせてご覧ください。有効開口まで描き込んだ建具図面の作成は、こちらからご相談ください。
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