造作図面が重要な理由と関連する図面との違いを解説

普段はあまり聞きなれない言葉ですが、建築業界や家具づくり業界では「造作図面」と呼ばれる図面があります。

「造作図面」は、建築物を建てる際や家具をつくる際に必要となる図面の一つで、建築業界や家具づくり業界では施工者の味方とも呼ばれております。

その理由として、通常、図面と呼ばれるものは2D(2次元)で作成されることが多く、施工者が平面の状況から立体的なものへ作りあげる際、「造作図面」を提示されると平面からの想像ではなく立体的なイメージ図から想像しながら着手することが可能となるからです。

もちろん、3D(3次元)の「造作図面」を作成することができる業者もありますが、2Dの「造作図面」を駆使し、他の図面と関連させながら立体的な表現をすることも可能です。

よりイメージに近づけるためには3Dが良い場合もありますので、外注を依頼される際は設計者や施工者との間で十分な事前調整が必要です。

そこで、今回は、「造作図面」が重要な理由と関連する図面との違いを解説します。

1. 造作図面とは

1‐1  建築物

建築物は基礎や躯体など本体の構造を表した設計図面をもとに施工者が建てることになります。

建築物全体を表現する場合は、設計図面から大まかなイメージを掴み、完成に近づけることになります。

しかし、建物内の詳細は平面図や立面図、断面図などからイメージができない場合がほとんどです。

その理由は、通常の図面は1/1000サイズなど、印刷できる範囲が限られているため、詳細を落とし込むことができないからです。

このような際、「造作図面」を作成し、建物内部の建築、特に素材の選定や結合部の種類といった細かな部分に生かすことができるのです。

1‐2  家具

通常、家具は既製品を購入することがほとんどですが、自宅をオーダーメイドで新築される場合や店舗を新装開店される場合、その空間と調和できるよう特注で家具をつくることがあります。

特注される場合の多くは、建物と一体化されるよう寸法や材質等、詳細な図面が必要となります。

そこで「造作図面」を作成し、建物内部との協調性や家具そのものの仕様を施工者へ伝えられるように提示します。

施工者は提示された「造作図面」に基づき、現場の施工を行います。

特に家具の場合は、特注であり、施主の希望やイメージをより具体的に図面に落とし込む必要があるため、とても重要な役割を果たします。

2. 造作図面が重要な理由

2‐1  視覚的表現の実現

「造作図面」の特徴の一つに、視覚的表現の実現が挙げられます。

これまで、3Dパースや模型等、小さなサイズで建築物や家具の仕上がりを見られて、完成品をイメージされたことが一度はあるかと思います。

3D図面ではなくとも2D図面で立体的な表現がされている場合、視覚的にイメージしやすいこともあります。

「造作図面」は、施主と設計者、施工者の3者が、目指す完成品のイメージを統一することができるため、とても重要な役割を果たすのです。

2‐2  デッドスペースへの対応

既製品の家具ではデッドスペースが生まれることも多く、後々、その建物内の有効活用に悩むこともあります。

しかし、家具を新調する際に建物のサイズに合わせて特注すると、縦・横・奥行すべてにおいてデッドスペースを最小限にすることが可能となります。

特に新築を建てられる際や店舗を新装される際は、同時に家具の新調を発注されることが多いため、最初の小さなミスをしないことが重要です。

このように、特注をする場合は「造作図面」が必要となります。

2‐3  設計者から施工者への意匠伝達

施主と設計者の間では、設計段階で多くの時間を割き、図面を作成することになります。

しかし、設計者と施工者の間では、そこまで頻繁にコミュニケーションをとることがなく、施工者は図面に基づき施工することがほとんどです。

そこで、設計者から施工者へ意匠伝達が上手くできず、結果的に施主の希望どおりの完成品にならないこともあります。

もし、完成間近で施主のイメージとは異なったものになっている場合は、つくり直しや手直しの作業が発生します。

このような事態を避けるため、「造作図面」を作成し、設計者から施工者へ、より詳細な意匠伝達を行い、施主のイメージどおりの建築物や家具をつくっていくことが可能となるのです。

3. 造作図面の種類

3‐1  平面詳細図・断面詳細図

建築物の場合、平面詳細図や断面詳細図を造作図面と呼ぶことがあります。

平面詳細図や断面詳細図は、施工者が建築現場で迷わないよう建物内部の詳細を細かく図面にしたものです。

具体的には、壁の厚みや使用する素材、床と壁の結合部やコンセントの位置など、その空間を一目見て分かるように作成するものです。

この図面を基準として、建築現場で施工することになります。

3‐2  家具図面

家具図面はその名のとおり、家具の平面図や断面図、必要に応じてデザイン性や機能性を図面化したものです。

その家具のオーダーの意図や設置箇所との融合など詳細に記載されているため、この図面を基準として施工します。

ただし、家具の場合、建築物とは異なり内寸や外寸の数㎜の差が設置する際の微妙なズレになることもありますので、より詳細な図面が求められます。

また、イメージしやすいように最近では、3Dパースで図面を作成する業者もあります。

4. 関連する図面との違い

4‐1  平面図

平面図は上から見た図面のことを指します。

通常、図面は1/1000サイズまで縮小されるため、建築物の場合、壁の厚みや床との結合部、柱との接点等の詳細は記載されておりません。

また、家具においても建築物と同様に詳細は記載されていないことが多く、施工者は設計者の意図を想像しながら、自身が持つ過去からの経験を生かし施工することになります。

平面詳細図や家具図面が作成されている場合は、施工者も自身の経験に依存せず、設計者の意図を汲み取り、材質や細かな寸法に基づき施工することが可能となります。

4‐2  断面図

断面図は、その建築物や家具を縦方向に切断し、内部構造を分かりやすく表現した図面を指します。

しかし、平面図と同様に建築物の場合、壁の厚みや床との結合部、柱との接点等の詳細は記載されておりません。

また、家具に関しても同様に、施工の際は施工者の経験に依存することが多くあります。

断面詳細図や家具図面が作成されている場合は、施工者も自身の経験に依存せず、設計者の意図を汲み取り、材質や細かな寸法まで施工することが可能となります。

4‐3  立面図

立面図は横から見た図面のことを指します。

こちらも平面図と同様、1/1000サイズまで図面が縮小されることが多く、建築物の場合、壁の厚みや床との結合部、柱との接点等の詳細は記載されておりません。

また、家具においても詳細が記載されていないことがほとんどです。

しかし、平面図や断面図だけではなく、平面詳細図や断面詳細図が用意されている場合や、また家具図面が用意されている場合は、横から見た完成品のイメージがつきやすく、より設計者の意図が汲みやすいものとなります。

したがって、立面図はモノづくりの最終工程で一番重要な図面とも言われております。

まとめ

「造作図面」は造作工事と呼ばれる現場の指針となる図面です。

造作工事とは、本体構造工事の後に内装工事をすすめることを指しますが、内装工事の詳細が提示されていない場合は、施工者の経験やスキルに頼ったものになりがちです。

場合によっては、設計者から造作図面の提示がない場合、施工者が独自で造作図面を作成し、設計者のコンセンサスを得ることもあります。

ただし、施工者が作成する造作図面は、建築士や設計士が作成する図面とは異なり、あくまで大まかな部分しか記載されておりません。

したがって、施工者へ施主の希望や設計者の意図を明確に伝えるためには、「造作図面」がとても重要なものとなります。

また、平面図や断面図、立面図等と見比べながら造作工事をすすめることにより、スムーズに施工がすすみ、無駄な時間を削減することが可能となることから、とても関連性が深いと言えます。

現在では、一旦「造作図面」を作成した後、少しずつ修正を加えながら、施主と協議をすすめる設計者もおりますので、依頼される場合は、その業者のホームページで公開されている過去の実績や業務のすすめ方等を参考にしてみても良いのではないでしょうか。

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