「建具図面作成」と聞いて、皆さんはどのような図面の作成をイメージされますか?
建具というとドアや窓を思い浮かべる方も多いと思います。
しかし、ドアや窓以外にも様々な種類の建具があり、「建具図面作成」は建築を進めるうえで重要な役割を果たし、欠かすことのできないプロセスです。
近年は、急激なITの進化により、オーダー建築の場合、CADで図面を作成することが容易になりましたが、つい十数年前までは、建築士や設計士が手書きで図面を起こし、実際の建築現場では図面どおりに建具の設置が進まず、施工者が臨機応変に対応していることもありました。
その対応方法も施工者の経験やスキルに依存することが多く、建具が図面どおりではなく、隙間ができる場合は、ドアに取り付ける蝶番で微調整を行ったり、逆に建具が大きすぎると現場で柱やドアを削る等、ギリギリの作業を施しておりました。
しかし、近年は建築物を含め、建具もCADで図面を作成することができるため、木製の場合は、季節による木の膨張や伸縮、金属製の場合は、摩擦により生じる傾きなども計算し、長期間、修繕が不要な仕様も施されるようになりました。
このように時代の変化とともに技術が発展した結果、生まれることになった「建具図面作成」のメリットと失敗しない外注依頼のポイントを解説します。
1.建具図面作成のメリット

1‐1 設計者と施工者の間で正確な情報を共有
建具図面の完成度が高いほど、設計者と施工者の間で正確な情報を共有することができます。
建具が一般的なサイズであったとしても、動くものを取り付けるといった目的があるため、その動きの寸法を考慮し建築する必要があります。
また、付属する金物の仕様によっては、現場で建具を取り付けた際、図面どおりの幅を超えることもありますので、建具図面を作成することにより、施工者の無駄な時間を大幅に削減することが可能となります。
1‐2 オーダー建具により、間取りの選択肢が増える
建具の一般的なサイズは決まっておりますが、狭小住宅の建築や施主のこだわりを尊重するための間取りを実現することを目的とし、時としてオーダー建具を作成することもあります。
このようなとき、施主から設計者へ、設計者から施工者へ、それぞれ情報の伝達が生まれます。
建具図面を作成しておくことにより、細かな寸法や使用する素材、仕上がりのイメージ等を共有することが可能となり、間取りの選択肢を増やすことや施主のこだわりを実現することができるのです。
一般的な建具のサイズに合わせると、限られた選択肢の中で間取りを設計することになりますが、建具図面作成の中で建築士や設計士が経験に基づく少しの知恵を落とし込み、施主の希望を叶えることができるのです。
2.建具図面の分類

2‐1 設計図書の中にある建具図面
設計図書の中にある建具図面は、寸法や素材、付属金物の概要を示すものです。
これらは、現場の施工に直接結びつくものではなく、あくまで一般的なイメージを図面として作成し、間取りや扉の開閉等を分かりやすくしたものです。
建築士や設計士の業務は2つに分かれており、施主のイメージを図面にすることと、施工者の現場作業を図面で示すことです。
設計図書の中にある建具図面は、施主のイメージを図面にすることを目的として作成されたものであり、現場施工に直接結びつきにくいものとなっております。
2‐2 設計図書を反映し、建具の製作と現場施工の両方をつなぐ建具図面
2‐1でご紹介した建具図面をもとに施工図面や製作図面として作成する建具図面があります。
この建具図面の作成により、法令やその地域の条例に抵触しないよう、現場の間取りを設計できるほか、施工者へ詳細を伝えることができます。
一般的な建具図面との違いは、この建具図面が建築確認申請等にそのまま流用できることにあります。
図面のとおり施工ができるため、行政機関等に提出し、承認を受けることが可能となるのです。
3.建具の種類

3‐1 外部建具・ドア
玄関の扉や勝手口のことを指します。
設置の目的は、家の出入りはもちろんのことですが、外部からの自然光や風を取り込むことにより、建築物の通気を促進し、建物の腐食を防ぐ効果もあります。
3‐2 外部建具・窓
各部屋に取り付けられている窓の目的は、屋外からの採光や屋内から屋外を見ることによる防犯の向上があります。
特に屋外からの採光は、建築基準法でも定められておりますので、重要な建具の一つです。
3‐3 室内建具
屋内の部屋やトイレ、風呂といった間仕切りを目的として設置するものです。
当たり前のことですが、屋内に間仕切りが設置されない建物はなく、この建具を設置することにより、プライベート空間やオープン空間を作り出すことができます。
また、建具の使用方法によっては、その建物を支える柱を有効に活用することができるのです。
3‐4 収納建具
屋内外に設置する収納スペースの開閉のために設置する建具のことを指します。
特に屋内では、クローゼットや小さな押入等を設置する際、収納建具の性能が重要となります。
また、屋外の場合もスペースを最大限に活用するために、建具の性能の良さが求められることもあります。
3‐5 その他
日常生活を送るなか、何気なく接している建具ですが、開き戸、引き戸、折れ戸等、様々な種類のものがあります。
使用用途やスペースの有効活用のために様々な建具を使い分けることになります。
建具図面を作成することにより、施主の完成イメージを具体化し、かつ施工者が現場で混乱しないため、正確な施工につながるのです。
4.失敗しない外注依頼先のポイント

4‐1 建築物のコンセプトに合わせた建具図面の作成
建具図面作成を外注する際、最も重要となる条件が、建築物のコンセプトに合わせた図面を作成することです。
建具図面の本来の目的は、イメージを分かりやすくするものではなく、現場での施工をスムーズにすすめるためのものです。
したがって、建築現場によっては、2Dの図面だけでは詳細が伝わらず3Dの図面を求められることもあります。
そのようなとき、建築士や設計士が施工者に対し的確な指示を出すことができるよう、作成しておく必要があります。
建具図面作成を外注する際、料金はもちろんのことですが、その業者の過去の実績や図面のファイル形式、施工者とのコミュニケーション能力等、総合的に判断する必要がありますので、あらかじめ情報を収集しておくことがポイントです。
4‐2 得意とする建具が木製か金属製かを確認
業者によっては、専門とする建具が木製か金属製、もしくは両方といった場合があります。
建具図面作成を外注する場合、その依頼先がどの分野を得意とするのか、過去の実績として、どのような図面を公開しているのかを事前に調べておきましょう。
また、公開されていない場合は、事前に質問し、必要に応じて過去の建具図面を見せてもらうことも一つの選択肢です。
木製、金属製両方を専門としている業者は意外と少ない傾向にありますが、外注依頼をする場合、どちらの専門性が高いのか、しっかりヒアリングをしましょう。
特に木製の場合は、季節や気候によって建具の膨張や伸縮箇所が大きく変わることもありますので、高い専門性を持った業者に依頼するようにしましょう。
5.まとめ
今回は、建具図面作成のメリットと失敗しない外注依頼のポイントを解説しました。
建築物の図面を作成する際、基本設計図、実施設計図、施工図の3種類が必要と言われておりますが、施工者が直接その現場を理解するためには施工図の完成度の高さが求められます。
建具図面の施工図を示すことにより、現場での施工がスムーズにすすみ、施主のイメージに近づけることができます。
また、建具の仕様によっては屋内外のスペースを最大限に生かすことができるため、外注依頼をする際、その依頼先の実績も重要となります。
建具図面作成の必要性やメリットを事前に理解しておくと、外注先を選定する際の検討材料にもなりますので、日ごろから検証しておきましょう。





