建具図面とは
- 「扉・窓などの建具種類」
- 「高さ・幅、厚さなどの寸法」
- 「木材・金属・ガラスなどの使用材料」
- 「ハンドル・ヒンジなどの取付金具」
- 「塗装・ステイン・表面処理などの仕上げの詳細」
などの詳細を示す図面のことです。
建具図面に大切なことはこれらの情報をできる限り図面で示し、施工者が現場で迷わないようにする工夫です。
設計士も人です。
また、施工者も人です。
当たり前のことですが、人がつくるものに完璧などありませんが、ミスや失敗は少なくしたいものです。
そこで建具図面の制作依頼で失敗しないために実案件から分かった注意点がいくつかあるのでお話ししようと思います。
扉の開閉がおかしい
過去から現在まで建具図面の制作で失敗が多い案件の一つです。
図面では室内でしっかり納まっているはずの扉が、いざ現場で施工を始めると納まり切らないことがあります。
現場でこの事象が生じる大きな原因は
- 木など部材の持つ特性
- 設計士のミス
- 部材の廃盤
- 施工者の読み違い
にあることが多いです。
①木など部材の持つ特性
1-1 木製の部材の場合
木は季節によって、空気中にある水分をたくさん吸収することもありますし、逆に乾燥することもあります。特に梅雨の時期には膨張します。
そのため建具図面を作成する時点で作図者は数ミリの遊びの幅を持たせるのですが、その幅を考慮しない設計士もいます。
建具で使用される部材のほとんどが木製です。木の伸縮を考慮しない作図は現場での問題につながります。
※林野庁のホームページに掲載されている統計データから国内における新築着工建築物の実に80%以上が木造の建物だと発表されています。
参考元(令和6年度森林・林業白書):
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/r6hakusyo_h/all/chap3_2_2.html
新築住宅、特に低層住宅(1~3階建て)の木造率は高く推移しています。
1-2 木製以外の部材の場合
では、木製以外の扉なら心配ないのか、と疑問に思われる方もあると思います。
実は木製以外の扉でも同じ現象が起こります。
あまり知られてはいませんがアルミや鉄は熱を帯びると自然に膨張するのです。
前項では国内の新築着工の80%以上が木造であることをお伝えしましたが、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造(S造)の建物の場合も室内は木製の建具を使用することがあります。また、木造住宅においても窓や勝手口など、アルミ製や鉄製の建具を使用することもあります。
したがって、建具図面の制作を依頼される場合は木やアルミ・鉄など、様々な部材の伸縮を考慮し、遊びの幅が適正に取られているかを確認しておく必要があります。
②設計士のミス

2-1間取りが思っていた以上に狭い
建具図面の制作を依頼する際、部屋の扉や襖を選ぶ機会があります。
設計士はこれまでの経験を活かして様々な種類の扉や襖を提案します。
提案方法は設計士によって異なりますが、3Dパースでイメージが湧きやすくする提案方法、実際のモデルルームで実体験を促す方法、写真でおしゃれなデザインを提案する方法などがあります。
これらの提案方法は一長一短ありますが、そもそも建具の動きを理解していないと間取りを有効活用することができません。
例えば、1つの部屋に3つの出入り口が必要な間取りがあるとします。
その3つの扉はすべて開き戸で、しかも設計上、部屋の内側に開く扉になったとします。
3つの扉がすべて内側に開くことになれば扉の可動範囲に家具や家電を設置することはできません。
ついついデザイン性を重視して扉の開閉範囲を忘れてしまうと、家具を置こうとしたときに初めて部屋の活用できる範囲がないということに気が付くのです。
もちろんデザイン性にこだわられることは当然ですが、注意すべきことはデザインだけではなく、建物の躯体や間取りそのものだと心に留めておくべきでしょう。
2-2障子にこだわった結果
近年の床材はフローリングが一般的ですが、施主によっては和室のスペースに憧れて、小さな和室を設けることもあります。
例えば和室とリビングの間を襖で間仕切して、夕食後や休日にくつろぐことができるスペースがあったら素敵ですね。
しかし、自宅が完成しリビングに入ってみると平面図から想像していたよりも狭く感じることがあります。
その原因は、平面図には襖の敷居まで記載されていないことがあるからです。敷居によってリビングと和室が区切られる視覚効果により個別の部屋という境界が際立ち、個別の部屋の狭さを完成した部屋を見て初めて感じるということです。
このような失敗を防ぐためには、やはり平面図と建具図面といった簡素な図面で建築するのではなく、平面詳細図と建具図面を突合し、平面図では不可視部分になっている箇所を特定できる設計士に依頼することが重要です。
③部材が廃番になった
建具図面の制作依頼をされた際、よく起こる失敗の一つに蝶番などの部材の廃番があります。
通常メーカーが廃番してから数か月~数年間は問屋が在庫として保管している場合が多く、すぐに困ることはありません。
したがって、建築中に部材が廃番になったとしても当初の建築図面どおりの施工を進めることは可能です。
しかし、その部材のメーカーの方針が変わったり、建築業界の主流が大きな転換期を迎えたりした場合は要注意です。
3-1部材のフルモデルチェンジ
メーカーは、蝶番などの部材のモデルチェンジをおおむね数年~約10年程度と決めております。また、メーカーが廃番にしたからといってすぐにその部材が流通しないといった事態にはなりません。 しかし、メーカーの方針により部材がフルモデルチェンジした場合は注意が必要です。
施工時に流通しているからといって、建具図面の指示どおり廃番になった部材を使用すると、その部材が壊れたときに後継部材が全く合わず、建具ごと交換しないといけない事態となるリスクがあります。
蝶番のような一般的な部材はまだしも特殊な部材を調達する場合簡単に交換ができず、泣く泣く扉ごと交換する方を何人も見てきました。 これらは、デザイン性や機能性を最大限に生かそうとした結果起こってしまう失敗です。 部材の選定については、できるだけ汎用性の高いものを意識しましょう。
3-2 後継部材も生産されない
また、廃番になった部材の後継部材が生産されないことも起こります。 建築業界は日々進化しており、より高い性能を追求し、より安価で、複数のデザインを展開することを努力しています。
そのなかで代替品のない動きを実現していた部材もコストカットや安全上の不備の発見等で廃盤となることがあります。 後継品もない場合や後継品がフルモデルチェンジしている場合には想定していた納まりや動きが実現しないことになります。
④まとめ
建具図面は住みやすい間取りを現実的に設計し、そのイメージを現場の施工者が忠実に施工するために制作依頼されるものです。 しかし、公共工事を専門とした設計士と民間の建築工事を専門とした設計士との間でも提案する建具の種類は異なり、どのような建具が発注者のイメージに沿っているかは図面だけでは分かりにくい部分もあります。
今回、挙げた失敗例は、多くの案件を請け負うなかで相談を受けるものを中心としましたが、他にも数々の失敗例はあります。 建具図面の制作を依頼のご参考になれば幸いです。
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