造作図面作成で失敗しないためのチェックポイント10選

建物を建てる際、際や家具を製作する際、複数の段階の図面が必要になります。

通常、施主が目にする図面は平面図や立面図、断面図等が多く、建物や家具のイメージをしやすいよう設計士や建築士が作成します。

一方、設計士や建築士が、これらの図面をもとに現場の施工者に細かな意匠伝達を行うことを目的として作成する図面を施工図面や製作図面と呼びます。

施工図面や製作図面は、その建物や家具の詳細を記載しているため、施工者はサイズや使用素材、接合部の工法等をより正確に選定することが可能となります。

そして、更には、施工段階で建物や家具の骨組み後に行う工程のことを総称して「造作工事」と呼びます。

施工者は、この造作工事の完了後、本格的な内外装工事にすすむことができるのです。

そこで、今回は造作図面の紹介と造作図面作成で失敗しないためのチェックポイント10選をご紹介します。

1.造作図面作成の目的

1‐1  建物

建物を建築する際、施工者が基礎工事や柱等、建物の構造工事を行った後、内外装工事に取り掛かります。

内装では壁のクロスや床と壁の間の接合部、外装では外壁や屋根の施工を行い、最終的には仕上げをすることになります。

内外装工事の準備工として、壁や天井等に木材やボードを取り付ける下地処理や扉の枠組み等を取り付ける建具の取り付け処理があります。

これらは造作工事と呼ばれ、建物の内観や外観、有効面積やデザイン性の仕上げ工事につながることになります。

これらの工事で使用する素材や工法を示した図面を造作図面と呼びます。

1‐2  家具

家具をオーダーメイドする際、平面図や断面図では、最終的な家具のイメージが湧きにくいことがあります。

3D図面の進歩により、以前に比べてイメージがしやすくなったと言われておりますが、あくまでイメージの向上に過ぎません。

そこで、施工者が最後の仕上げを仕様通りに行うために必要となる図面が造作図面となります。

建物の造作図面と同じく、下地処理を図面通りに行う工程があり、この工程後に最終工程の仕上げができるのです。

2. 造作図面の種類と失敗しないためのチェックポイント

2‐1  平面詳細図

平面図との違いは、図面の縮尺率や記載内容です。

平面図では記載できない詳細部分を記載しており、壁厚や扉の開口有効面積等、イメージ図よりも一歩踏み込んだ図面です。

詳細な記載があるため、完成度を高めるうえでは非常に重要な役割を果たす図面です。

☆壁や柱等、中心となる線が記載され、必要となる壁厚等の寸法が確保されているかをチェックしましょう。

2‐2  断面詳細図

建物や家具の断面図を上から垂直に切り、外装や内装の詳細を記載した図面です。

通常、断面図では、高さや幅、奥行き等の寸法は記載されておりますが、内壁と外壁の詳細や屋根と天井の隙間のような詳細までは記載されておりません。

このように不可視部分の詳細や給排水の配管ルート等を記載した図面を断面詳細図と呼びます。

また、家具においても建物と同様に不可視部分の記載が重要と言われております。

☆平面図と見比べ、壁厚等の寸法が正しく記載されているか、また、不可視部分の詳細や給排水の配管ルートまで正確に記載されているかをチェックしましょう。

2‐3  展開図

展開図は、室内の中心から四方の壁面を表す図面です。

壁面の仕上げの詳細や建具の位置等を詳細に記載しており、設計士や建築士から施工者へイメージを伝えるためには重要な図面の一つです。

展開図は、平面詳細図や断面詳細図と見比べながら、内装の最終工程をすすめるための図面です。

☆建具の位置やキッチン設備等の配置箇所、スイッチの高さやコンセントの箇所等が正確に記載されているかをチェックしましょう。

2‐4  部分詳細図

平面詳細図や断面詳細図でもすべての記載が難しいため、特に注意する箇所や重要な箇所を部分的に拡大し、詳細を記載した図面のことを指します。

施工現場における小さな誤差をなくすことができるため、施工者にとっては安心する材料となります。

☆他の図面では判別できない、特に重要な箇所の使用素材や工法の詳細が記載されているかをチェックしましょう。

2‐5  造作家具図

オーダーメイドの家具を製作する際、その家具の詳細を記載した図面です。

オーダーメイドの家具の場合、設計から施工、設置までの一連の流れが分かるよう施主の希望を図面として表し、施工者に伝えることになります。

特に家具の場合、既製品では納まらないことや部屋の雰囲気に馴染まないといった理由がオーダーメイドを選択する理由になりますので、寸法の正確さやデザイン性の高さが求められます。

☆施主のこだわりや設置する箇所の環境、家具の納まりや開口部の有効幅等、デザイン性のみにとどまらず、実用性を兼ね備えているかをチェックしましょう。

2‐6  建具図

戸や窓、敷居等、建具の詳細を記載した図面です。

建具図では、平面図に記載できない寸法の詳細や使用素材、取付金具のメーカーや品番等、具体的な仕様が記載されております。

建具図に基づき施工を行いますので、開口部の有効幅を確認し、間取りを最大限に生かすことができます。

☆建具表等、関連する図面と見比べ、齟齬がないかをチェックしましょう。

また、平面詳細図や断面詳細図、展開図等との齟齬がないかもチェックしましょう。

2‐7  天井伏図

天井材がどのような材質なのか、また、どのような照明器具が設置されているのか等、床から天井を見上げた際の詳細を記載した図面です。

平面図は上から見た図面、断面図は横から見た図面、天井伏図は下から見た図面といった、それぞれの役割があります。

☆照明器具の位置の配置ミスや天井仕上げ材の漏れがないかをチェックしましょう。

2‐8  割付図

平面詳細図と非常に似ている図面ですが、使用用途が全く異なります。

割付図には、使用するタイルやクロス、天井のボード等、仕上げ工事に欠かすことのできない詳細な項目が記載されております。

割付図に基づき、使用材料を仕入れるため、無駄な材料を購入する必要がなく、最小限の費用で施工することが可能となります。

平面詳細図は建物や家具の詳細を表し、割付図は無駄な経費を最小限に抑えることを目的として作成するため、それぞれの使用用途は異なります。

☆使用するタイルやクロス、天井のボード等の使用素材の選定ミスや色の間違いがないかをチェックしましょう。

2‐9  巾木・廻縁図

巾木は、壁と床の接合部に取り付ける見切り材のことを指し、廻縁は壁と天井の接合部に取り付ける見切り材のことを指します。

これらは、壁との接合部を隠すために必要な部材になり、この見切り材の材質や色、接合部の工法等を図面にしたものを巾木・廻縁図と呼びます。

☆平面詳細図や断面詳細図と見比べ、見切り材の材質や色、寸法等に間違いがないかをチェックしましょう。

2‐10 躯体図

建物や家具の色、使用する素材までの詳細は記載せず、主には基礎や柱、梁や床等、構造そのものを記載した図面です。

建物や家具の躯体は、寸法の微妙なズレにより後々、傾くこともありますし、戸や引き出しが動かなくなることがあります。

全ての工程の一番の要となり、長期間にわたって建物や家具を使用するためには、この躯体図の正確さが重要となります。

☆構造の基礎工事につながるため、素人では分かりにくい部分もたくさんありますので、後々のトラブルを防ぐことができよう、必要に応じて第三者の目線でチェックできる体制を整えておきましょう。

3. まとめ

普段はあまり見ることのない造作図面ですが、建物や家具の製作において最終工程の準備のためには大変重要な役割を果たしていることをご理解いただけたと思います。

造作図面作成で失敗しないことが造作工事の成功を左右し、そして、造作工事の成功が内外装工事の成功につながります。

今回は、それぞれの図面における役割やチェックポイントをご紹介しましたが、そもそも造作図面の作成そのものが高額な場合もあります。

また、設計業者によっては、納期や経験値、スキルの問題を抱えている場合もありますので、事前に調べておくことが失敗しないためのコツです。

そして、何よりも日ごろからの調査により、必要な図面の作成と不要な図面の作成が判別できるようになり、無駄な出費を抑えることにもつながります。

造作図面作成で失敗しないためには、やはりご自身の少しの努力と知識の習得が何よりも近道となります。

造作図面が必要になったときは、信頼を置ける設計士や建築士に出会うことが大切であるということを忘れず、事前の準備をすすめていきましょう。