造作工事がスムーズに進む図面とは?設計と施工の視点から解説

建築工事をすすめるうえで、内装工事の一つの工程を造作工事と呼び、内装工事の基礎となる、重要な部分です。

建築の内装工事の場合、造作工事の工程により部屋の間取りや建具の取り付け位置など自由度が増しますので、その後につながる内装の仕上工事にとっては非常に重要な工程になります。

一方、同じ「造作」という言葉を使いますが、造作家具と呼ばれるものがあります。

造作家具は、ご自宅のキッチンにあるカウンターや収納、店舗の広さに応じて適切な寸法におさめるカウンターや備え付けのテーブルなどを指します。

建築工事では、ハウスメーカーなどが設けている既存の寸法で間取りや建具の取り付け位置を決めることがあり、この造作工事の工程が省略されることもあります。

しかし、注文住宅では住みやすさや快適な空間をつくることを目的として、造作工事を取り入れ、限られた面積のなかで心地よい住まいにつながることもあります。

そして、この造作工事をスムーズに進めるためには、工事の種類に応じた図面が必要となりますが、設計者によっては得意とする図面、不得意とする図面の作成があることも事実です。

今回は、造作工事をスムーズに進めるための図面の紹介と設計、施工、それぞれの視点からの解説をします。

1. 造作工事がスムーズに進む図面

大前提になりますが、造作工事は最終的な工程である塗装工事やクロス工事など、内装仕上工事の一つ手前の工程になりますので、工期の遅れは許されません。

既製品ではないからといった理由で造作工事が遅れることにより、内装の仕上工事が当初の予定よりも短期間での仕上げとなることや雑な仕上げとなることがあるからです。

しかし、前段のとおり造作工事は本来、その建築物の自由度を広げるための工程になりますので、現場では想定外の事態も織り込んでおく必要があります。

そこで、造作工事がスムーズに進む図面を事前に準備しておくことが重要となります。

1-1 平面詳細図

平面図をもとに、壁の厚みや柱の位置、開閉扉の有効幅などの詳細を記載した図面のことを平面詳細図と呼びます。

平面詳細図では、平面図に記載できない詳細部分を記載することができるため、現場の施工者にとっては悩むことや迷うことが最小限に抑えられ、図面の指示どおりに施工をすることができます。

1-2 断面詳細図

断面図では省略されることが多い床下や天井裏の構造、使用する部材の詳細などを記載するための図面を断面詳細図と呼びます。

基礎の深さや断熱材の種類、床下の配管の通り道など、不可視部分の多くを記載できるため、現場の施工者は平面詳細図と合わせて適切な施工をすることが可能となります。

1-3 階段詳細図

階段の平面と断面の両方が図面になり、階段幅などの詳細を記載した図面を階段詳細図と呼びます。

大規模な建築物の場合、建築基準法や消防法等、法令の規定に基づく施工をする必要があるほか、ご自宅や店舗など比較的小さな建築物の場合も階段詳細図を作成しておくことにより、現場の施工者は設計者の意図を理解することが可能となり、スムーズに施工をすることができます。

1-4 展開図

部屋の中に立ち、それぞれの壁を見た際に目に映る景色を図面としたものを展開図と呼びます。

展開図では、設備や建具の位置、床から天井への高さなどを詳細に記載しているため、現場の施工者はそれぞれの部材の位置などに迷う心配がなく、設計者の意図をくみ取ることができます。

2. 設計の視点

造作工事をスムーズに進めるためには、設計の視点から、施工者に対してできるだけ詳細な指示を送ることができるよう図面を作成する必要があります。

設計者は施主からイメージを聞き取り、図面を作成することが仕事となりますが、同時に施工者へ施主のイメージを伝えることも大切な仕事です。

そこで、曖昧な図面により現場の施工者へ意匠伝達を行うと、施工者は工程ごとに悩むことや迷うことが増え、スムーズに工事を進めることができません。

造作工事は、ハウスメーカーなどが既存の寸法で間取りや建具の取り付け位置を決めていることとは異なり、現場ではイレギュラー対応が多く発生しますので、設計の視点からは、造作図面の作成が施工者へ詳細を伝えることのできる重要な機会となります。

2-1設計者の経験やスキルを生かす

平面図や断面図をもとに平面詳細図や断面詳細図を作成することにより、設計から施工への意匠伝達を最大限に発揮することができます。

そのためには、やはり設計者の経験やスキルが重要なポイントとなり、施主のイメージをくみ取り、施主と施工者の両方の立場に立った図面を作成することが求められます。

施工完了後に何度もやり直し(手戻り)が発生すると、工期に間に合わず余計な費用が発生することにもなりかねません。

設計者は施主から受けた注文を正確に施工者へ伝えるために、造作図面を作成し、工事がスムーズに進められるよう準備します。

2-2 施主との綿密な打ち合わせ

設計の段階で誤った認識を持つと図面の詳細にも誤りが生じ、当然のことですが、その誤った図面をもとに施工すると施主のイメージから離れた完成品になります。

設計者の使命は、あくまで施主のイメージを施工者へ伝えるために正確な図面を作成することになりますので、事前のヒアリングはもちろんのこと、施工段階での綿密な打ち合わせや必要に応じて現場立ち会いなどをします。

既製品ではないからこそ、施主と設計者の間の意思疎通が必要となるのです。

3. 施工の視点

造作工事をスムーズに進めるためには、施工の視点に立つと、設計者へのヒアリングや設計者からの意匠伝達に十分な時間を割くことが大切なポイントです。

設計者はもちろんですが、場合によっては、施主と直接コミュニケーションを持つ機会をつくり、設計の段階で齟齬が発生していないか、施工者自身が想定している工法や部材が施主のイメージに沿っているのか確認することが必要です。

通常、施主と施工者が直接コミュニケーションを取る機会はほとんどありませんが、造作工事を進めるうえでは、やはり設計者を含めた協議の場を持つ方が良いでしょう。

3-1 施工者の経験やスキルを生かす

設計者がこれまでの経験やスキルを生かし、造作図面を作成することと同じように、施工者もまた自身の経験やスキルを生かすことが求められます。

また、机上では数ミリ単位のズレも生じることがなかった図面であったとしても、やはり使用する部材は木やアルミ、鉄といった生き物になりますので、実際の現場では柔軟な対応が求められることも多々あります。

そのような局面においては、施工者の創意工夫により問題を解決に導くことが増えますので、自身の経験やスキルを最大限に生かすことができるよう設計者と常に連絡を取り合える関係性が必要です。

3-2 設計者と綿密な打ち合わせ

造作図面をもとに施工する場合は、ある程度のヒアリングや事前調整によって大まかな仕様を理解することができます。

特に平面詳細図や断面詳細図、展開図などに加え、使用する部材一覧表が準備されている場合は、施工者はとてもスムーズに工事を進めることができます。

しかし、施主の予算の関係や設計者のスキルにより、造作図面が施工者の求める内容を網羅していないこともあります。

このようなケースでは、結果的に段階ごとに設計者へ照会をかけ、設計者が施主へ照会し、回答を待つといった無駄な時間を費やすことになります。

施工の視点からも、やはり正確な造作図面と綿密な打ち合わせが必要となります。

4. まとめ

いかがでしたか。

今回ご紹介した記事をお読みいただき、造作工事がスムーズに進む図面をご理解いただけたと思います。

建築工事のなかでも特に造作工事においては、施主と設計者、そして施工者の意思統一が最も重要であり、そのためには平面詳細図や断面詳細図、階段詳細図や展開図といった造作図面は欠かすことのできない図面となります。

施主、設計者、施工者の間で、わずかなイメージのズレが生じると、最終的には工事の修正や図面の修正を何度も繰り返すことになり、工期に間に合わないばかりか場合によっては無駄な費用を発生させることになります。

このようなトラブルを未然に防ぐためには、やはり正確な造作図面の作成が不可欠となり、施主から設計者へ、そして設計者から施工者への意匠伝達が有効になります。

また、各工程の段階において、可能な範囲で施主と施工者の間でのコミュニケーションを取る機会も設け、その場には設計者も立ち会っていただく方が良いでしょう。

限られた面積のなかで心地よい住まいにつながるための造作工事になるよう、お互いが尊重しあいながら、一つの完成品を目指し協力できる体制を整えておくことが必要となります。